Serumで実現!微分音Colour Bassの音作り

詳細情報

日時 2025年03月07日 22:05 - 22:50
テーマ Karplus/Strong法を用いた 微分音Colour Bassの音作り
発表者 MisohitoNakai
集会名 VRC微分音集会
発表資料 ファイル

VRChatの「VRC微分音集会」で、MisohitoNakaiさんによる「Karplus/Strong法を用いた微分音Colour Bassの音作り」という発表がありました。

今回は、その内容を基に、微分音Colour Bassの音作りについて掘り下げていきます。

Xfer Serumを使ったレゾネーターのテクニックは必見です!

Colour Bassとは?

その背景

Colour Bassは、ベース音を特定の周波数に共鳴させて、コード感のあるサウンドを作り出す音楽ジャンルです。

Dubstepから派生したもので、レーベル「Rushdown」を主宰するChimeさんの楽曲が「Colour Bass」と称されたのが始まりと言われています。

倍音豊かなベース音を共鳴させることで、独特のサウンドが生まれます。

ボコーダーや、短い和音のIR(インパルス応答)を使う方法、そして今回のテーマであるCombフィルタを複数使用してピッチを作り出す方法などがあります。

Karplus-Strong合成:撥弦楽器の物理モデリング

Karplus-Strong合成は、撥弦楽器の音を物理的にモデリングする手法の一つです。

Alexander StrongさんとKevin Karplusさんが共同で開発・解析しました。

この合成方法は、大きく分けて「エキサイター」と「レゾネーター」という2つの部分で構成されています。

エキサイター:短いノイズの発生

まず、エキサイターは短いノイズを発生させます。

これは、弦をはじいた時の音をシミュレートするものです。

レゾネーター:遅延とループ、そして減衰

次に、レゾネーターがこのノイズを遅延させ、ループさせて減衰させることで、エコーを作り出します。

この遅延時間が非常に短いため、周期的波形が生成され、音高が発生するのです。

さらに、ディレイ中にローパスフィルタを通すことで高域を減衰させ、より自然な音色に近づけます。

Comb Filterの動作原理と特性

Comb Filter(コムフィルタ)は、フィードバック型のものが一般的で、これは周波数による減退がないKarplus-Strong合成の形をしています。

Comb Filterの仕組み

ノイズなどの信号を遅延させ、その出力を元の信号にフィードバックすることで動作します。

フィードバック時のアンプの大きさ(α)が重要で、0から1の間の値を持ちます。

振幅特性:櫛のような形状

Comb Filterの振幅特性は、櫛(comb)のように周期的にとがった形状になります。

そのため、共鳴音が基音とその整数次倍音となり、楽音として感じられるのです。

SerumのComb系Filterの仕様

Xfer Recordsのシンセサイザープラグイン「Serum」には、CombフィルタやFlangeフィルタが搭載されています。

これらのフィルタはフィードバックを使用しており、振幅特性は櫛型になります。

CombフィルタとFlangeフィルタの違い

Combフィルタは、レゾナンスを0にすると元の音のみが出力されます。

一方、Flangeフィルタは、レゾナンスを0にしても元の音と1回の遅延音が重ねられます。

SerumのCutOff周波数とキーフォロー

Serumでは、約167~172Hz近辺を右クリック入力し、オシレーターから基準音を聞きながらうなりを聞いて調整します。

マイナスフィードバックの場合は334~344Hzになります。

また、キーフォロー機能により、入力されるピッチに応じてCutoff値が変化します。

Combフィルタ系では共鳴する周波数の基音が変わり、Karplus-Strong合成による演奏が可能になります。

Serumはチューニングファイル(.tun)に対応しており、微分音にも対応できます。

Serum FX:エフェクタとしての活用

SerumのFXバージョンは、エフェクタとして使用できます。

ノイズ部分が外部入力となっており、フィルタやオシレータを通すことも可能です。

MIDI入力にも対応しているため、VSTeとして音源としても機能します。

微分音Colour Bassの音作りでは、この機能を使い、外部から入力されるベースに対し、SerumのComb系フィルタで音高を付加します。

DAW(REAPER)でのルーティング

MisohitoNakaiさんはDAWのREAPERを使用して、緻密なルーティングを構築していました。

通常の音のルーティングとColour Bassのルーティングを使い分けています。

Colour Bassのルーティングのポイント

ベース音源からの信号をSerum FXに送り、Combフィルタでレゾナンスを生成します。

同時に、Combフィルタの制御用にMIDI信号をSerum FXに送ります。

これにより、ベース音に特定の音高を付与し、Colour Bass特有のサウンドを作り出すことができます。

実例:REAPERでの制作

REAPERでの実例として、ベース部分とレゾネーター部分を分けてトラックを作成していました。

Serum FXでチューニングファイル(.tun)を読み込んだCombフィルタに、ベース音をAudio Inから入力して通します。

同時に、MIDI信号をSerum FXに送り、Combを制御します。

具体的には、ベーストラックの音を複数のSerum FXトラックにSendし、それぞれのSerum FXトラックにMIDI信号を分配して送ります。

まとめ

MisohitoNakaiさんの発表では、SerumのCombフィルタとKarplus-Strong合成を応用することで、微分音Colour Bassの独特なサウンドを作り出す方法が紹介されました。

REAPERでのルーティングやSerum FXの活用など、実践的なテクニックは非常に参考になります。

今回紹介されたテクニックを参考に、あなたもSerumで新たな音作りに挑戦してみてはいかがでしょうか。

スライド資料(PDF)

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開催日: 2025年03月07日

開催時間: 22:00 - 23:00

開催曜日: 金曜日

開催周期: 月1回

毎月最初の金曜日に開催。微分音・Xenharmonicといった西洋音楽の12平均律を飛び出した音楽理論や調律理論、関連技術についての交流会です。 集会では不定期でLTやお悩み相談も開催予定。 音楽に関わりのあるすべての方々に、斬新で画期的な新時代の音楽のアプローチを提唱いたします。

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