🎲サイコロで理解する⚛️原子核崩壊と拡散現象 〜単純化されたモデルで本質を理解する〜
詳細情報
日時 | 2025年05月17日 22:30 - 23:00 |
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テーマ | 🎲サイコロで理解する⚛️原子核崩壊と拡散現象 〜単純化されたモデルで本質を理解する〜 |
発表者 | さめ(мег-сск) |
集会名 | VRChat物理学集会 |
発表資料 | リンク ファイル |
VRChatの「物理学集会」で、さめさんが「🎲サイコロで理解する⚛️原子核崩壊と拡散現象」というテーマで面白い発表をしてくれました。
複雑に思える物理現象も、実は身近なサイコロゲームのような単純なモデルで理解できる!
そんな驚きと発見に満ちた発表の様子をお届けします。
サイコロゲームで物理現象を再現?
さめさんが提案するモデルはとてもシンプル。
箱の中にたくさんのボールを入れて、サイコロを振って出た目によってボールを出し入れしたり、移動させたりするというゲームです。
この一見単純なゲームが、なんと「原子核崩壊」や「拡散現象」といった、高校物理や大学物理で習うような現象の本質を見事に捉えているというのです。
物理現象を理解するために、こんなにも身近なものを使えるなんて、なんだかワクワクしてきますね。
原子核崩壊をサイコロで理解する
原子核崩壊は、放射性物質が時間とともに変化していく現象です。
その数の減り方は「指数関数的」という特別な形をしています。
サイコロゲームでこれを再現するには、箱の中のボールを原子核に見立てます。
サイコロを振って偶数が出たらボールを取り出し、奇数ならそのままにするというルールで、すべてのボールに対してこの操作を繰り返します。
ボールが減る確率と原子核崩壊の速さ
1回の操作でボールが取り出される確率は1/2、残る確率も1/2です。
これを繰り返すと、残るボールの数は操作の回数を重ねるごとに (1/2) のべき乗で減っていきます。
この「操作の回数」を「時間」と見立て、「ボールが残る確率 (1-p)」を「原子核が崩壊せずに残る確率」と考えると、原子核崩壊の式と同じ形になることが示されました。
つまり、サイコロを振るというランダムな操作が、原子核のランダムな崩壊を見事にモデル化しているのです。
半減期とサイコロを振る頻度
原子核崩壊には「半減期」というものがあります。
これは放射性同位体の数が半分になるまでの時間です。
サイコロモデルでは、この半減期が「サイコロを振る頻度(の逆数)」と解釈できるという話でした。
サイコロを頻繁に振れば振るほど、ボールが減るスピードが速くなり、半減期が短くなる。
直感的にも分かりやすいですね。
拡散現象をサイコロで理解する
次に、インクが水の中に広がっていくような「拡散現象」をサイコロで再現するモデルです。
これは、時間の経過とともに物質が広がっていく様子を表します。
サイコロゲームでは、ボールを一次元の直線上(x軸)に置きます。
最初はすべてのボールを原点(x=0)に置きます。
サイコロの目によって、ボールを右に移動させたり、左に移動させたり、あるいは移動させなかったりします。
ボールの移動と拡散の方程式
サイコロの目が1か2なら右に+aだけ移動、3か4なら左に-aだけ移動、5か6なら移動しない、というルールを設定します。
これをすべてのボールに対して行い、時間の経過とともにボールの分布がどうなるかを考えます。
時間の経過とともにボールが原点から広がっていく様子は、インクの染みが広がる様子に似ています。
ボールの密度の時間的な変化を数式で追っていくと、なんと「拡散方程式」と呼ばれる式が導き出されることが示されました。
拡散方程式は、インクの広がりだけでなく、熱の伝わり方など様々な拡散現象を記述する基本的な方程式です。
拡散係数とサイコロの確率
拡散現象の速さを表す「拡散係数」も、このサイコロモデルで理解できます。
拡散係数は、サイコロの目が左右に移動する確率pや、一回の移動距離a、そして操作を行う時間間隔Δtに関係していることが示されました。
確率pが大きいほど、ボールが活発に動き回り、拡散が速くなる。
これも直感的で面白いですね。
シンプルなモデルの力
今回の発表を通して、複雑な物理現象も、サイコロを使ったような単純なモデルでその本質を捉えることができるという「シンプルなモデルの力」を実感しました。
これは、物理学だけでなく、生物学や工学、社会科学など、様々な分野で重要な考え方だそうです。
発表の最後には、蔵本由紀先生が2025年のボルツマンメダルを受賞されたという素晴らしいニュースも紹介されました。
蔵本モデルも、同期現象という複雑な現象をシンプルな数式で表現した例として有名です。
複雑な世界をシンプルに捉えることの面白さ、そしてそれが私たちの理解を深める助けになることを改めて感じさせてくれる発表でした。
物理学って、難しそうに見えて、実は身の回りの現象と繋がっていて、こんなにも面白く理解できるものなんだ!
と、物理への興味がさらに深まる時間でした。
物理学集会では、LT登壇者も募集しているとのこと。
物理学に興味のある方は、ぜひ参加してみてはいかがでしょうか。
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開催日: 2025年05月17日
開催時間: 22:00 - 23:00
開催曜日: 土曜日開催周期: 隔週(グループB)
わたしたちの身の回りで起こる現象のすべては 物理学によって理解できる(あるいは理解可能と期待されている)と言っても過言ではありません。 しかし普段の生活で、それをじっくり語る機会は少ないと思います。 「VRChat物理学集会」は、そんな物理好きたちのための集いです。 物理に興味を持ち始めたばかりの人から、 日々物理と格闘してる研究者・技術者まで、 みんなで集まって気軽に物理の話を…