GPSの秘密に迫る!相対論がスマホの位置を教える驚きの仕組み【VRChat物理学集会】
詳細情報
日時 | 2025年04月19日 22:30 - 23:00 |
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テーマ | GPSで活躍する相対論! 〜人工衛星はどのようにスマートフォンの位置を測るのか?〜 |
発表者 | さめ(мег-сск) |
集会名 | VRChat物理学集会 |
発表資料 | リンク ファイル |
2025年4月19日にVRChatの「VRChat物理学集会」で開催された、さめさんの発表「GPSで活躍する相対論!
〜人工衛星はどのようにスマートフォンの位置を測るのか?
〜」は、私たちの身近にあるGPSの驚くべき仕組みと、そこに隠されたアインシュタインの相対性理論の深い関わりを、とても分かりやすく教えてくれました。
GPSはどうやって位置を測るの?
GPSが私たちのスマートフォンの位置を特定する基本的な仕組みは、光の速さと時間を使って距離を測るというシンプルな考え方に基づいています。
人工衛星から発信された電波がスマートフォンに届くまでの時間を計ることで、衛星とスマートフォンの間の距離が分かります。
幾何光学による位置測定
一つの人工衛星からの信号だけでは、スマートフォンの位置はその衛星を中心とした球面のどこかにある、ということしか分かりません。
これは、衛星からの距離が半径となる球の表面上にいる、と考えることができるからです。
二つの衛星からの信号を受信すると、それぞれの衛星を中心とした二つの球面の交線である円周上のどこかにいることが分かります。
さらに三つの衛星からの信号があれば、その円周と三つ目の衛星を中心とした球面の交点、つまり二つの候補地にまで絞り込めます。
そして四つ目の衛星からの信号を使うことで、最終的にスマートフォンの正確な位置を特定できるのです。
実際には、地球の表面をもう一つの球面として扱うことで、三つの衛星でも測位を行うことが多いそうです。
航空機など、高度の高い場所では四つ目の衛星による測位が特に重要になります。
相対論効果がGPSに与える影響
GPSによる正確な位置測定には、時間の正確な測定が不可欠ですが、人工衛星の高速な動きや地球の重力が、時間の進み方に影響を与えます。
これが特殊相対論と一般相対論の効果です。
特殊相対論効果による時間の遅れ
特殊相対論によれば、高速で動く物体の時間は、静止している観測者から見るとゆっくり進みます。
GPS衛星は高速で地球の周りを回っているため、地上の時計よりも時間の進みが遅くなります。
さめさんの説明によると、GPS衛星の速度は約3.9km/sで、この速度による時間の遅れは1日あたり約7.3マイクロ秒にもなります。
これは非常にわずかな時間差のように思えますが、光の速さでこの時間差を距離に換算すると、測位の精度に大きな影響を与えることが分かります。
一般相対論効果による時間の進み
一方、一般相対論によれば、重力が強い場所ほど時間の進みは遅くなります。
地球の表面は人工衛星がいる高度よりも重力が強いため、地上の方が衛星よりも時間の進みが遅くなります。
つまり、人工衛星の時計は地上の時計よりも早く進むことになります。
さめさんは、シュバルツシルト計量という考え方を用いて、この重力による時間の差を計算されていました。
計算結果によると、一般相対論効果による時間の進みは1日あたり約45.5マイクロ秒となり、特殊相対論による遅れよりも大きいことが示されました。
トータルで生じる時間差と補正
特殊相対論による時間の遅れ(-7.3マイクロ秒)と一般相対論による時間の進み(+45.5マイクロ秒)を合わせると、GPS衛星の時計は地上の時計と比べて1日あたり約38.2マイクロ秒早く進むことになります。
この時間差を放置すると、1日で約11.5km、35日後には約400kmもの位置のずれが生じてしまいます。
想像してみてください、カーナビで東京に行こうとしたら大阪に連れて行かれてしまうようなものです!
GPSが正確な位置情報を提供できるのは、この相対論効果による時間差を精密に補正しているからです。
具体的には、人工衛星に搭載されている原子時計の周波数を、あらかじめ相対論効果によって生じる遅れ分だけずらしておくことで、地上の時計と同期するように調整されています。
理論の計算は複雑でも、解決策はシンプル、というGNSSのエレガントさが伝わってきました。
まとめ
さめさんの発表を通して、普段当たり前のように使っているGPSが、人工衛星からの光の信号と時間の測定に基づいていること、そしてその正確な測位にはアインシュタインの相対性理論による時間の遅れと進みの両方を考慮した精密な補正が不可欠であることがよく分かりました。
特殊相対論と一般相対論という、一見私たちの日常生活とはかけ離れているように思える理論が、実はスマートフォンの位置情報という形で私たちのすぐそばで活躍しているなんて、とても驚きでした。
技術的な内容も、さめさんの分かりやすい説明とユーモアあふれる語り口のおかげで、楽しく学ぶことができました。
相対論が私たちの生活にこんなにも深く関わっているという事実に触れ、科学への知的好奇心がさらに刺激される素晴らしい発表でした。
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VRChat物理学集会
開催日: 2025年04月19日
開催時間: 22:00 - 23:00
開催曜日: 土曜日開催周期: 隔週(グループB)
わたしたちの身の回りで起こる現象のすべては 物理学によって理解できる(あるいは理解可能と期待されている)と言っても過言ではありません。 しかし普段の生活で、それをじっくり語る機会は少ないと思います。 「VRChat物理学集会」は、そんな物理好きたちのための集いです。 物理に興味を持ち始めたばかりの人から、 日々物理と格闘してる研究者・技術者まで、 みんなで集まって気軽に物理の話を…