協和の強さの数値化をめざして

詳細情報

日時 2025年01月03日 22:05 - 22:50
テーマ ハーモニックエントロピーの基本
発表者 MisohitoNakai
集会名 VRC微分音集会
発表資料 ファイル

和音の協和の度合いの数値化を目的として

音楽における和音にはさまざまなものがあり、微分音的な協和についても考えることができるものの、従来よりどの音程がどれほど協和するかという具体的な指標は考案されてこなかった。そこで音程をもとに、より人間の聴覚システムに近しい評価をすることができる具体的な協和の度合いについて、様々な研究がなされてきた。


目的

ハーモニックエントロピー(HE)は、和音の協和感を数値化するための指標で、聴覚的協和感をシャノン情報理論の枠組みで評価する。


背景

  • HEは和音の「協和」や「不協和」を数値的に表現する試みであり、シンプルな和音(例:純正音程)はエントロピーが低く、複雑な和音はエントロピーが高い。
  • パウル・エリッチが提案し、ウィリアム・セタレスらにより研究が進展。

基本概念

  • シャノンエントロピー
    情報量の期待値を基に音程の確率を評価。
  • 単純な有理音程は「協和的」と判断され、情報量が少ない。
  • 複雑で特定が難しい音程は「不協和的」とされ、情報量が多い。

  • ハーモニックエントロピーの定義
    各音程 ( c ) が、有理音程 ( j ) として認識される確率 ( P(j|c) ) に基づくシャノンエントロピー。


技術的要素

  1. 高さ(Height)/調和距離の制限
    無限にある純正音程を有限に絞るため、「Tenney Height」や「Weil Height」を使用し、音程の複雑さを抑制。

  2. 確率分散
    ガウス分布を基に、ある音程がどれだけ別の音程と認識されうるかをモデル化。

  3. 領域積分確率
    音程認識の確率を、各有理音程領域の積分で計算する方法。

  4. 単純重み付き確率
    領域積分の代替として、高さを用いた経験的な重み付け法。


応用

  • 音階(微分音を含むもの)の評価
    各MOSスケールや音律特性におけるHEを計算し、協和感を比較(例:Meantoneが高い評価)。
  • 暗号学的アプローチ
    聴覚の精度を考慮した「ハーモニックレニイエントロピー(HRE)」が提案され、音程認識のモデルを拡張。

まとめ

ハーモニックエントロピーは、音楽的協和感の定量的評価に有用な概念であり、異なるスケールや聴覚の特性に応じた分析が可能。また、音楽心理学や調律の理論的研究にも貢献する。

関連ツール:
ウェブアプリでの計算可能。(HE計算アプリ

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開催日: 2025年01月03日

開催時間: 22:00 - 23:00

開催曜日: 金曜日

開催周期: 月1回

毎月最初の金曜日に開催。微分音・Xenharmonicといった西洋音楽の12平均律を飛び出した音楽理論や調律理論、関連技術についての交流会です。 集会では不定期でLTやお悩み相談も開催予定。 音楽に関わりのあるすべての方々に、斬新で画期的な新時代の音楽のアプローチを提唱いたします。

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