脳の電気信号を物理学で解く!静止膜電位の不思議な世界

詳細情報

日時 2026年03月07日 22:00 - 22:30
テーマ
発表者 Dendrite_さん
集会名 VRChat物理学集会
発表資料 ファイル

私たちの頭の中にある脳。
そこでは、無数の神経細胞が電気信号をやり取りして、思考や感情を生み出しています。
2026年3月7日、VRChatで開催された「VRChat物理学集会」にて、Dendrite_さんがこの脳の不思議を物理学の視点から解き明かす、非常に興味深い発表を行いました。
今回は、生命の神秘を支える「電気の仕組み」について、皆さんと一緒に覗いてみましょう!

神経細胞が「お休み」している時の不思議な電気

皆さんは、私たちの神経細胞が情報を伝えていない時、どんな状態にあるか想像したことはありますか?
実は、何もしていない時でも、細胞の内側と外側ではわずかな「電気の差」があるのです。
これを「静止膜電位」と呼びます。
Dendrite_さんによると、この時の電圧は約マイナス70ミリボルト。
乾電池の1.5ボルトに比べればごくわずかですが、この小さな電圧の差こそが、脳が活動するための「準備万端な状態」を作り出しているのです。
まるで、いつでも発射できる弓矢の弦をピンと張っているような、静かなエネルギーに満ちた状態と言えるかもしれません。

イオンたちが織りなす「追いかけっこ」のバランス

なぜ、細胞の内と外で電気の差が生まれるのでしょうか?
その鍵を握っているのは、カリウムやナトリウムといった「イオン」と呼ばれる小さな粒たちです。
細胞の膜には、特定のイオンだけを通す「チャネル」という小さな穴が開いています。
Dendrite_さんの説明では、細胞の内側にはカリウムイオンがたくさんあり、外側にはナトリウムイオンがたくさん待機しているそうです。
カリウムイオンは、濃度が高い内側から低い外側へと逃げ出そうとします。
しかし、プラスの電気を持つカリウムが出ていくと、細胞の中はマイナスの電気を帯びていきます。
すると今度は、電気の力でカリウムが内側へ引き戻されるのです。
この「外へ出たい力(濃度勾配)」と「内に戻りたい力(電場)」がぴったり釣り合った状態が、静止膜電位の正体なのです。

物理学の数式が解き明かす生命のルール

この絶妙なバランスを、物理学の世界では「ネルンスト式」という美しい数式で表すことができます。
Dendrite_さんは、この数式がどのように導かれるのか、その背景にある「ネルンスト・プランク式」についても触れてくれました。
これは、粒子の広がりやすさと電気の影響を組み合わせた、非常に強力な考え方です。
さらに、複数のイオンが関わる複雑な状況では「GHK電圧式」という式が使われます。
一見難しそうに見える数式ですが、実は「どのイオンがどれくらい通りやすいか」という個性を反映しているだけなのです。
私たちの命の営みが、物理学の普遍的な法則によって記述できるというのは、とてもロマンチックなことだと思いませんか?

脳を動かす「ポンプ」とダイナミックな活動

細胞は、ただ受動的にバランスを取っているだけではありません。
「ナトリウムーカリウムポンプ」という仕組みを使って、エネルギーを消費しながら一生懸命イオンの濃度を保っています。
Dendrite_さんは、このポンプの働きがあるからこそ、私たちは常に情報を処理できる状態を維持できているのだと教えてくれました。
そして、何かの刺激を受けてこのバランスが大きく崩れた瞬間、あの有名な「活動電位」が発生します。
マイナスだった電位が一気にプラスへと跳ね上がるこの現象こそが、脳内を駆け巡る情報の正体です。
静かな湖面に石を投げた時に広がる波紋のように、電気の波が次々と伝わっていく様子を想像すると、生命の精巧さに驚かされます。

電気生理学が切り拓く未来の可能性

今回の発表では、こうした現象を実際に測定する「パッチクランプ法」などの技術についても紹介されました。
顕微鏡で見ることさえ難しいほど小さな細胞に、極細のガラス管を当てて電気を測る。
そんな職人技のような研究の積み重ねによって、私たちは脳の仕組みを少しずつ理解してきました。
Dendrite_さんが紹介してくれた「ポアソン・ボルツマン・ネルンスト・プランクモデル」のような高度なシミュレーション技術を使えば、将来は脳の働きをコンピューター上で完全に再現できる日が来るかもしれません。
VRChatという仮想空間で、こうした最先端の科学議論が行われること自体が、新しい時代の幕開けを感じさせてくれますね。

物理と生命が交差する場所で

Dendrite_さんの発表を通じて、私たちの体がいかに緻密な物理法則の上で成り立っているかを実感することができました。
「静止膜電位」という一見地味な言葉の裏には、イオンたちのダイナミックな動きと、それを支える美しい物理学の世界が広がっています。
こうした知識を知ることで、自分の思考や感覚が、より愛おしく、不思議なものに感じられるのではないでしょうか。
これからも、VRChat物理学集会のような場所で、新しい発見や驚きを皆さんと共有していけるのが楽しみでなりません。
科学の力で、私たちの「当たり前」を「感動」に変えていきましょう!

発表スライド(PDF)

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VRChat物理学集会

開催日: 2026年03月07日

開催時間: 22:00 - 23:00

開催曜日: 土曜日

開催周期: 隔週(グループB)

わたしたちの身の回りで起こる現象のすべては 物理学によって理解できる(あるいは理解可能と期待されている)と言っても過言ではありません。 しかし普段の生活で、それをじっくり語る機会は少ないと思います。 「VRChat物理学集会」は、そんな物理好きたちのための集いです。 物理に興味を持ち始めたばかりの人から、 日々物理と格闘してる研究者・技術者まで、 みんなで集まって気軽に物理の話を…

わたしたちの身の回りで起こる現象のすべては 物理学によって理解できる(あるいは理解可能と期待されている)と言っても過言ではありません。 しかし普段の生活で、それをじっくり語る機会は少ないと思います。 「VRChat物理学集会」は、そんな物理好きたちのための集いです。 物理に興味を持ち始めたばかりの人から、 日々物理と格闘してる研究者・技術者まで、 みんなで集まって気軽に物理の話をしましょう! 力学、電磁気、熱力学、統計力学、流体力学、量子論、相対論、物理学の歴史、最新の研究、ちょっとした雑学ーーどんな話題でもOK! ときには「そもそもって何だっけ?」みたいな問いかけも、ここでは大歓迎です。 物理の話題で盛り上がれる仲間に、きっと出会えるはず。 もちろん専門知識は不要! 「宇宙ヤバい!」とか「好きなアニメに物理用語が登場してた!」でも立派な参加理由です! 重力も、電磁気も、そして人の縁も、すべては相互作用。 この集会が、物理を愛する人同士を引き寄せ合う力を生じる場になれば嬉しいです!