妖怪は研究できる?VRChatで学ぶ「妖怪学」の最前線と研究のヒント
詳細情報
| 日時 | 2025年12月17日 21:00 - 21:30 |
|---|---|
| テーマ | 妖怪の研究方法 |
| 発表者 | 相塚松(あいつかまつ)さん |
| 集会名 | 妖怪好き交流所『怪し火-AYASHIBI-』 |
| 発表資料 | ファイル |
2025年12月17日、VRChatの妖怪好きが集まる交流所「怪し火-AYASHIBI-」にて、代表の相塚松(あいつかまつ)さんによる非常に興味深い発表が行われました。
テーマは、誰もが一度は耳にしたことがあるけれど、実は謎に包まれた「妖怪の研究方法」についてです。
「妖怪って本当に研究できるの?」という素朴な疑問から、最新の学術的なトレンドまで、妖怪愛にあふれる相塚松さんが熱く語ってくれました。
メタバース空間で繰り広げられた、知的好奇心を刺激する妖怪学の世界を一緒に覗いてみましょう!
妖怪は本当に研究できるのか?
皆さんは「妖怪」と聞いて何を思い浮かべますか?
カッパや天狗、あるいは最近流行ったアマビエなど、人によってイメージはバラバラかもしれません。
実は、作家の京極夏彦さんは「“妖怪”をテーマとして研究する学問などは、ない」と述べています。
これは妖怪が嫌いだから言っているのではなく、むしろその逆です。
「妖怪」という言葉はあまりに範囲が広く、正確に定義することが難しいため、一つの学問として独立させるのが非常に困難だという意味なのです。
しかし、相塚松さんは「やり方次第で研究はできる」と力強く語ります。
例えば、歴史学、民俗学、文学、美術など、さまざまな分野の専門家がそれぞれの視点で「妖怪的なもの」を分析し、それらを持ち寄ることで、多角的に妖怪の正体に迫ることができるのです。
1990年代後半からは、国際日本文化研究センターや東アジア恠異学会といった場所で、本格的な共同研究が進められてきました。
バラバラだった知識のピースが、今まさに一つの大きな絵として組み合わさり始めているのです。
妖怪にまつわる「3つの思い込み」を解き明かす
妖怪の研究を難しくしている原因の一つに、私たちの中にある「偏見」があると相塚松さんは指摘します。
よくある思い込みとして、「妖怪は昔の古い考え方だ(前近代的)」「子供だましの娯楽だ(通俗的)」「民俗学だけの領分だ」という3つが挙げられます。
しかし、これらはすべて、近年の研究によって覆されつつあります。
実は、私たちが今イメージしている「妖怪」という概念がしっかり形作られたのは、江戸時代から明治以降にかけての、比較的新しい出来事なのです。
また、妖怪は学問の世界だけで語られるものではなく、浮世絵や小説、漫画といった大衆文化と影響し合いながら育ってきました。
さらに、民俗学だけでなく、歴史学や心理学、さらにはデータサイエンスの視点からも研究されています。
「古い、子供向け、民俗学だけ」という枠を外してみると、妖怪はもっと自由で、現代的な研究対象として輝き始めるのです。
「妖怪」って結局なんなの?定義の冒険
「妖怪とは何か?」という問いに対して、偉大な先人たちも頭を悩ませてきました。
例えば、民俗学の父・柳田國男さんは「零落した神様」だと考え、小松和彦さんは「人間に祀られていない超自然的な存在」と定義しました。
一方で、現代の視点では「絵に描かれたキャラクターとしての妖怪(画像妖怪)」や、「不思議で怪奇なもの全般」を指すなど、その定義は時代や目的によって変化しています。
相塚松さんは、研究の目的によって「何を妖怪とするか」を使い分けることが大切だと教えてくれました。
「正解」を一つに絞るのではなく、なぜその時代にその存在が「妖怪」と呼ばれたのか、その背景にある人々の心の動きや社会の状況を読み解くことこそが、妖怪研究の醍醐味なのです。
定義が揺れ動くからこそ、そこには無限の探求の余地が残されていると言えるでしょう。
妖怪の歴史は一本道ではない
これまで、日本の妖怪の歴史は「江戸時代の絵師が描き、明治の学者が否定し、昭和の民俗学者が集め、水木しげるさんが広めた」という、一つのきれいな流れで説明されることが多くありました。
しかし、相塚松さんは「実際はもっと複雑で、無数のネットワークが絡み合っている」と説明します。
かつては「脇役」だと思われていた歌舞伎や浮世絵、あるいは名もなき愛好家たちの活動が、実は今の妖怪イメージを作る上で大きな役割を果たしていました。
最近では、こうした「主流の歴史」からこぼれ落ちてしまったエピソードを、在野の研究者や妖怪オタクの方々が丁寧に拾い上げ、再評価する動きが活発になっています。
歴史は一本の川ではなく、多くの支流が合流したり分かれたりする、複雑で豊かな流れなのです。
現代の妖怪研究はこんなに面白い!
今、妖怪研究はかつてないほどの盛り上がりを見せています。
相塚松さんが紹介してくれた最新の潮流は、どれもワクワクするものばかりです。
例えば、「ジェンダーの視点」から妖怪を分析したり、AIや統計を使って「妖怪がどこに現れやすいか」をデータで解析したりする研究も進んでいます。
さらに、日本の妖怪を海外のモンスターと比較する国際的な交流も盛んです。
特に素晴らしいのは、大学の先生だけでなく、一般の妖怪ファンや「妖怪オタク」と呼ばれる方々の研究が、学術界にも大きな影響を与えている点です。
ブログや同人誌、そしてこのVRChatのようなコミュニティで発信される考察が、新しい発見の種になっています。
専門家とアマチュアの垣根を超えて、みんなで「あやしいもの」を追いかける。
そんな自由で熱気のある空気感が、今の妖怪研究を支えているのです。
一緒に妖怪の深淵を覗いてみませんか?
相塚松さんの発表を通じて感じたのは、妖怪研究は決して堅苦しいものではなく、私たちの想像力をどこまでも広げてくれる楽しい冒険だということです。
「妖怪について研究したいなら、今こそが始め時」という言葉に、勇気をもらった方も多いのではないでしょうか。
身近な伝承を調べてみる、好きな妖怪の絵のルーツを探ってみる。
そんな小さな一歩から、あなただけの妖怪研究が始まります。
VRChatの「怪し火」のような場所では、これからもこうした熱い議論や交流が続いていくことでしょう。
皆さんも、自分なりの「妖怪」を見つけに、一歩踏み出してみませんか?
きまじめに、そして存分に楽しむ心があれば、妖怪たちはきっとその不思議な姿を私たちの前に現してくれるはずです。