分散型メタバースの開発

詳細情報

集会名 ゲーム開発集会
日時 2024年02月11日 22:00 - 22:28
テーマ 分散型メタバースの開発
発表者 fog
発表資料

分散型メタバース Project

分散型メタバース開発について

分散型メタバース開発のきっかけ

  • 既存のメタバースサービスの多くが中央集権型
  • 中央集権型の問題点
    • UGCが企業側に集中
    • サービス終了のリスク
    • 規約や仕様の変更が企業の一存
    • サーバー障害の影響が全体に波及
  • 分散化による多重化はコストがかかる
  • ⇒ これらの問題を解決するために分散型メタバースを作りたい

分散型メタバースの内容

  • ユーザーの座標に基づいた接続先最適化アルゴリズムの開発
  • リアルタイム通信にWebRTCを採用
  • コンテンツ管理に分散型ファイルプロトコルIPFSを採用

分散型の定義と目指すもの

  • 分散型には様々な定義が存在
    • サーバーの仮想/物理的な分散配置
    • ブロックチェーンによるデータの分散保存
  • 完全分散を目指す
    • 全てのユーザーに処理を分散
  • 既存の分散型メタバース(例: Decentraland)
    • イーサリアム上で動作
    • コンテンツはNFTで記録
    • 暗号資産を用いたコンテンツ購入が可能
  • 課題: サーバーホスト不要でユーザーのみで成立させること

分散型メタバース開発の課題

  1. コンテンツ管理
  2. ピアツーピア通信における接続先決定アルゴリズム

システム概要

  • リアルタイム通信: WebRTC
  • コンテンツ管理: IPFSとメタデータ
    • メタデータにはワールド構成情報やコンテンツ情報などを格納

通信について

  • 主に扱う情報
    • ユーザー/コンテンツの座標
    • ワールド変更通知
    • テキスト/ボイスチャットデータ
  • WebRTCを採用した理由
    • 既存プロトコル/技術の組み合わせ
    • 標準化されている
  • NAT越え
    • シグナリングサーバー
    • ルーティングテーブルによる転送先決定

コンテンツ管理について

  • メタデータによる管理
    • オブジェクトの座標情報、回転情報
    • コンテンツ情報
  • IPFS (InterPlanetary File System)
    • 分散型ファイルストレージプロトコル
    • ファイルの内容によってアドレスが決まる
    • ファイルはブロック単位で管理
    • アクセス数が多いファイルほどダウンロード速度が向上

メタデータの詳細

  • 座標、回転情報
  • コンテンツ指定
  • コンポーネント
    • オブジェクトに機能を追加 (例: インタラクト方法)
    • Luaスクリプトで記述

評価

  • 接続先最適化アルゴリズムの評価
    • 仮想環境での評価
      • ユーザー参加時の接続
      • ユーザー移動時の接続維持
      • 新規ユーザーの発見
    • 結果
      • 通信回数と接続数のトレードオフ
      • 移動速度に応じた通信頻度の調整
  • 実環境での確認
    • VRChatユーザーの協力
    • 問題点: 特定NAT環境下での接続問題、遅延時間

まとめ

  • 分散型メタバース開発の背景、システム概要、評価結果を紹介
  • 今後の課題: 接続問題の解決、遅延時間の改善

質疑応答

  • コンテンツのレンダリングはUnityで実装
  • WebRTCはUnityのパッケージを使用
  • データチャンネルでバイト配列を送信
  • 今後、アバターの動きもデータとして送信予定
  • データの信頼性と重要度に応じてUDPとTCPを使い分け

その他

  • プログラムはGitHubで公開中
  • 今後も開発を継続予定

感想

発表者は分散型メタバースの開発について、その背景からシステムの詳細、評価結果、今後の課題までを丁寧に説明していました。特に、既存の中央集権型のメタバースサービスが抱える問題点を明確に示した上で、分散型メタバースの優位性を訴求していた点が印象的でした。

技術的な面では、WebRTCやIPFSといった最新の技術を積極的に採用し、パフォーマンス向上のための工夫も凝らしていることが伺えました。また、仮想環境だけでなく、実環境での検証も行うなど、開発の進捗状況についても具体的に報告しており、発表者の熱意が伝わってきました。

質疑応答では、参加者から寄せられた技術的な質問に対しても、的確に回答しており、発表者の深い知識と理解を感じました。分散型メタバースは、まだ開発途上の技術ではありますが、今後の発展に期待が持てる発表内容でした。